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ブラームス《愛の歌》公演に寄せて

Johannes Brahms
ヨハネス・ブラームス(1833 – 1897)は日ごろ古楽に根差す私にとって随分と新しい人物です。

19世紀、時代や技術が革新的に進歩する中、音楽もワーグナーを筆頭に先進化の一途でした。
その大きな波のまさに真ん中に立ちながら、つねに先人の音楽を見つめ続けたブラームス。「今こそ古の技術に立ち返るべきではないか」と提唱し続け、自らの音楽でもって生涯に渡り表出しました。

ブラームスはサロンが嫌い。キラキラと社交的な場が嫌い。最初にサロンに誘ってくれたリストを長年ネチネチと恨みます。
だからワルツなんて。
あんな社交的な音楽なんて自分には縁がないと、意地を張っていました。
そしてブラームスは美しいものが好きでした。

11月の演奏会では、“そんな”ブラームスが書いたワルツを歌います。
依怙地な胸の奥で憧れ続けたウィンナ・ワルツ。

『正直なところ、印刷された自分の作品を見て微笑んだのはこれが初めてです』
出版社ジム・ロックへ宛てた書簡の中の言葉です。

ブラームスがたたえた微笑みを想うたび
私の胸は熱く甘く震えます。
あなたの心の美しさにかなう音楽が自分に宿りますようにと。

私は演奏会そのものが作品と考え、
音楽たちを並べて拵え、客席へ贈ることが、自分のクリエイティヴだと考えています。
その時に包むものは自分の心ではなく作曲者の心でありたい。だから、どこまでも作曲者の心を追いたい。

11月が心に描く演奏会となるよう、すべての音と地道に対話しながら、ブラームスを教えてもらっています。

会場となる松明堂音楽ホールは彫刻家・画家である望月道陽さんが監修した、静かな聖堂を思わせるホールです。
響きがやわらかく、所々に作家の作品も飾られています。
ブラームスのワルツに込められた愛と祈りがあの場所でどんな風にお客様の耳は心へ届くのか、想像するだけで楽しみです。

11月23日(日)、演奏会は14時開演です。
松明堂音楽ホールは新所沢駅より徒歩3分。
ご一緒いただけること、心より願っております。

ご予約はメッセージやチケットサイト( https://tiget.net/events/399129 )にて承っております。
小さなお子様のご来場もお気軽にご相談ください。